え〜今回ははかなり重く悲観的な内容なので読まないで下さい(笑)。お願いします(笑)。
なんか絶望とかされてこの記事のせいにされたりするのもイヤなんで。
今更ながら自己啓発ブームが続いています。ネット上でもそれ系のサイトをよく見かけるし、なんか文化として完全に根付いたといってもいいと思います。
街の本屋では自己啓発本が特集コーナーのメインの座を奪って久しく、毎週のようにそれらしき新刊本が宣伝されていて、もう連戦連覇でまるで永世名人のような風格すら漂わせています(笑)。
この手の本は平易な内容のわりにその実現は難しく(というか非常識的。「1日5分で億万長者に!」とか(笑)、そりゃ普通に考えたら無理でしょ。)、ハマると何も実現できぬまま次から次へと自己啓発を渡り歩く「自己啓発難民」となってしまう恐れがあリます。
本だけならば出費も大したことはありませんが、セミナーなんかに通いだすと要注意。その手のビジネスの餌食となります。自戒の念も込めて取扱いには注意したい。
大切な時間とお金を無駄に使わないためにも、しっかりとその歴史と実情を押さえておきたいものです。
ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)は自己啓発のルーツについて解説しています。キリスト教の
ニューソートと呼ばれる19世紀に起こった宗教運動が自己啓発のルーツとされています。これはプロテスタントの禁欲主義(カルヴァニズム)へのアンチとして起こった運動で、「欲せず慎ましく」という清貧の思想みたいなものを否定し、現世利益を肯定するという運動ですね。なるほどルーツはこんなところにあったんですね。
自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)。こちらでは日本の自己啓発(著者は「自分探し」という言葉で表現)の歴史と現状を分析しています。ニューソートからニューエイジへと発展し日本へ飛び火した自分探しの流れはアジア志向、フリーター、ゆとり教育などと絡み合いながら社会の至るところにその根を張りつつあると分析しています。就活、居酒屋、ラーメン屋、沖縄ボラバイト、路上詩人、セカイ系などなど。ん〜結構自分にも思い当たるフシがあるなぁ…。
ジャーナリストの福沢恵子さんとコラムニストの深澤真紀さんの昨年の対談記事です。これからの季節は就職や新年度のスタートで気合の入る時期ですが、そんな時期には特にこの手のものには気をつける必要があると警告しています。本はあくまで著者が印税を稼ぐため、自分のためにやっているビジネスだとズバッと切っています。
自己啓発本は読んではいけない? 日経ウーマンオンライン
「自己啓発本」との上手な付き合い方(2) 日経ウーマンオンライン
作家の橘玲さんのブログサイトに「自己啓発の歴史」という連載記事があります。
独自の視点で、あまり本に載っていないような裏側の話が書かれていて興味深いです。
自己啓発の歴史(1) CIAとLSD 橘玲 公式サイト
自己啓発の歴史(2) サイケデリックの発見 橘玲 公式サイト
自己啓発の歴史(3) 「自己実現」という魔法の言葉 橘玲 公式サイト
自己啓発の歴史(4) エスリンとニューエイジ 橘玲 公式サイト
自己啓発の歴史(5) 洗脳と超越 橘玲 公式サイト
自己啓発の歴史(6) サイケデリック革命とインナートリップ 橘玲 公式サイト
自己啓発の歴史(7) 社会革命から自分革命へ 橘玲 公式サイト
ザ〜ッと眺めてみると自己啓発ってのは、もともと「
今の社会でない新しい(理想の)社会を」っていうダイナミックな運動だったのが、時代とともに細分化されて「
今の自分でない新しい(理想の)自分を」というパーソナルな運動に変化したものだということ。そしてその背景にあるのはシステム化、マニュアル化された近代社会の裏面としての人間性への渇望だってことです。
こうした状況そのものは時代の表裏だから善いも悪いもないと思います。ただ注意すべきはそうした状況すらも当然のように「市場」として捉えられ、自分らしさや個性といった人間性(のようなもの)がパッケージとしてシステム化され、商品として流通しているということです。それこそカルト宗教から近所のラーメン屋さんにまで今ではありとあらゆるところにその「人間性」商品が流通している。支払うのはお金だったり労働だったり時間だったりといろいろ。
つまり自分の今の状況に疑問があるからと言って外にとび出したり内にこもってみたりして、幸運にも「何か」を見つけたとしても、その「何か」自体が以前と同じシステムの中で商品として提供されているものだということです。新たな世界や自分を発見したわけではなく、今まで知らなかった商品を見つけただけ…。
なんかSF映画の未来世界みたいですね。何の希望もない世界。そしてスーパーヒーローが現れて一件落着、とはならないでしょうが(笑)。
じゃぁどうすればいいの!?いやぁ、私にもよくわかりません。何もしないのがいちばんのような気がしますが…。